ダークな哲学で魅了するブラマヨ・吉田の新刊『黒いマヨネーズ』がポジティブ至上主義の世を笑う!
とかくポジティブ礼賛・ポジティブ至上主義ムードが蔓延して、息苦しいと思うことはないだろうか。光と陰があってこその人間なはずなのに、SNSなどでマイナス思考を吐き出せば、周囲から叩かれることさえある昨今だ。そんな中、ダーク哲学の旗手ともいうべきブラックマヨネーズ・吉田敬によるエッセイ集『黒いマヨネーズ』が登場した!
真っ白に漂白されがちな社会を、吉田敬(ブラックマヨネーズ)の独自の屈折角度視点で見ると…
ブラックな毒舌を吐く芸人は多いけれど、本質的な面では何の新しみもない、単なる悪口・陰口にとどまってしまう人は多い。それにあまり興味を持てないのは、言ってはいけないことを言うというだけのパフォーマンスに感じられてしまうからだ。それは子どもが覚えたての卑猥な言葉を叫んで、大人たちの反応を楽しんでいるのと大差ない気がする。
そんな中、一貫してダークな哲学ともいうべき、コンプレックスから生まれる”やってられない感”を表現しつつ、しっかり笑いもとっているのが、ブラックマヨネーズ・吉田敬である。そして彼の胸の内、脳内の仕組みを知る大いなる手がかりとなるのが、幻冬舎発行のエッセイ58篇を詰め込んだ書籍『黒いマヨネーズ』(四六判並製 256ページ・希望小売価格 税抜1,400円・2019年2月27日発売)だ。
この書籍は雑誌「パピルス」(幻冬舎・現在休刊)と「小説幻冬」(幻冬舎)に連載されたエッセイの中から選抜された珠玉のエッセイ集。「ブラックマヨネーズ吉田敬のぶつぶつ」、「人生は、パチンコで教わった。」に続く3冊目の書籍である。
アタマの方でツカミのように、すかさず初体験話や祖母に育てられた少年時代なども軽妙につづられるが、その芯にあるのはやはり長年培ってきたダークな哲学。これが面白い話ではあるが、読み進むうちに考えさせられる視点として、心のあちこちに突き刺さってくる。
以前、人気バラエティ番組「アメトーーク! 」(テレビ朝日)のプレゼン企画で彼が出演して、パワーポイントのスライドとともに、イケメンとブ男の格差を”やってられない”、略して”てられな”と表現して笑いをとっていたが、その時に、この人はそうしたやってられない感としっかり向き合いながら生きていることがわかって、すごく共感したことを覚えている。
エッセイの中でもギャンブルや酒などについてつづられているが、やってられない日常とうまく付き合っていくために必要な悪しき行為を悪びれずに、生きていくために必要なエッセンスとして受け止めていることがよくわかる。最近は健康増進法など、余計なお世話に思えることまで、行政が介入してくる時代だ。庶民の生きるすべとして人類と歩んできた喫煙など嗜好品も、次第に排除されてきている。タバコを壊滅させたら、彼の愛する酒も同じ目にあうに違いない。
芸人としてM-1王者となり、売れっ子となって、幸せな家庭も得た今でも、彼の思い続ける”てられな”感は健在だ。モテるイケメンは、余計な考えや行動に時間を費やす必要がないからブ男より優秀になる理論も、けっこう正確な観察ではないだろうか。
1、2ページでまとめた短いエッセイは、18歳選挙権や東京2020などへの社会派のテーマにも独自の視点で斬り込みつつ、きちんとオチをつけていく芸人的な配慮がしっかり。時には「頑張って生きることに、一体何の意味があるのか」と問題提起していながらも、その中で実はしっかりとモチベーションを保つ方法を教えてくれる。
普段から周囲の圧力に負けてマイナス思考を振り払おうとして苦労している人は、きっと変則的ながらもこの世界観に勇気付けられるかもしれない。収録エッセイは「初体験」「卒業式で泣く奴の浅さ」「アホかも知れない俺の後輩」「選挙権を取り上げろ」「不倫と浮気は別物論」「2020 東京オリンピック」「トランプの年収」「角刈りの留学生を探して」「生まれ変わるなら」「一考して欲しい事」「異常な街・東京」「愚痴ることの大切さ」ほか。
入手は全国の書店などで可能だ。
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