【輸入ウイスキー飲み比べ】スコッチ『グレンドロナック』『ベンリアック』と、アイリッシュ『ブッシュミルズ 』、そしてライ『ウッドフォードリザーブ』【基礎知識付】【糖質ゼロ】
世界的に原酒不足となるほどウイスキーがブームを呼んでいる。ただ一口にウイスキーといってもその種類はさまざま。そこで今回は”スコッチ””アイリッシュ””ライ”の3種に絞って、基礎知識とともに飲み比べてみたい。登場するのはスコッチウイスキーが『グレンドロナック 15年』『ベンリアック 12年 シェリーウッド』の2種、アイリッシュウイスキーが『ブッシュミルズ シングルモルト 12年』、ライ(アメリカ)が『ウッドフォードリザーブ ライ』である。
ウイスキーの今さら聞けない基礎知識
中国富裕層の拡大でウィスキーが大量消費されるようになり、世界的な原酒不足になっているウイスキー。大麦、ライ麦、トウモロコシなどの穀物を原料として作る蒸留酒の1つだ。日本人の間でも古くは水割りで、近年ではハイボールの材料として人気が高い。
ウイスキーは材料によって、分類される。大麦麦芽(モルト)のみを原料としたモルト・ウイスキー、トウモロコシ、ライ麦、小麦などの穀物(グレーン)を原料に、大麦麦芽を加えたグレーン・ウイスキー、その2つを混ぜたブレンデッド・ウイスキー、ライ麦を主な原料にしたライ・ウイスキー、トウモロコシが原料で、中でも”バーボン”が有名なコーン・ウイスキーに大別される。よく聞く”シングルモルト”というのは、1つの蒸留所で作られたモルト・ウイスキーを原料にしたものである。
そしてもう1つの分類が産地によるもの。こちらの方がイメージが湧きやすいと思うので、今回は代表的な産地由来の3種類を取り上げてみたい。
「スコッチ」……英国スコットランド生まれのスモーキーさが特徴の高級ウイスキーの代名詞
まずは高品質ウイスキーの代名詞とも言えるスコッチ・ウイスキーを紹介したい。スコッチは英国スコットランドで作られるウイスキーで、仕込みの時に泥炭(ピート)で麦芽を燻蒸することで、独特のスモーキーな香りをまとっているのが特徴だ。
そして熟成される年月や樽によって、さまざまな複雑な味わいを生み出してくる。
英国スコットランド/スコッチウイスキー
『グレンドロナック 15年』
グレンドロナック蒸溜所は、東ハイランドのフォルグの渓谷に位置し、1826年に創業されたスコットランドで最も歴史あるシェリー樽熟成のエキスパートと呼ばれる蒸溜所。そこから生まれた名品が『グレンドロナック 15年』。
その特徴は、複雑な味わいを持つ熟成シェリー酒「オロロソ」の樽と、アンダルシア産の超甘口ワイン「ペドロヒメネス」の樽を組み合わせて15年以上熟成させて生み出したスモーキーなだけではない複雑な芳香と味わいが特徴。
まずストレートで飲んでみると、とろりとした滑らかな口当たりで、甘みがふんわりと広がりスモーキーさが一本芯を通すという高級感たっぷりのプロフィール。問答無用に美味しいと思わせる絶妙な味仕立てはさすが。
ロック
とはいえ日本人の胃腸の弱さ及びアセトアルデヒド分解酵素を持たないという特徴を考えると、ロックで味わうのが現実的だ。もちろん少しの溶けた水と冷たさが加わることで、さらに味わいはシャープに立ち上がり、香りの広がりもより素敵になり、美味しい。
・ハイボール(ウイスキー&ソーダ)
さらに日常的に飲むのに現実的なハイボール・スタイルで飲んでみたが、これも炭酸によく合い、弾ける香りがフレッシュさをアップする。ただせっかくの味わいをしっかり堪能するならワンフィンガーよりもツーフィンガーで、少し濃いめで味わうとよりリッチなテイストになる。
英国スコットランド/スコッチウイスキー
『ベンリアック 12年 シェリーウッド』
スコッチからもう1本。華やかな香りを持つスコットランド北部スペイサイド産の大麦麦芽(モルト)を使用して、シェリー樽熟成原酒、オロロソ樽フィニッシュ原酒、ペドロヒメネス樽フィニッシュ原酒の3種類を調和させて生まれたのが『ベンリアック 12年 シェリーウッド』。
ベンリアック蒸溜所は1898年に創業された蒸溜所で、ノンピートタイプとヘビーピートタイプの2つのタイプのシングルモルトウイスキーを製造する個性派として知られるところだ。
ストレートで一口飲むと、シェリー樽の甘みとともに複雑なフルーツ感のある香りが立ち上がる。控えめなスパイシー感とともにスモーキーさがミックスされて生まれる洗練された美味しさ。女性にも好まれそうな上品な仕上がりである。
ロック
うっとりするアロマ感がひんやりとすることで際立ち、複雑なフルーツ感が引き締まる印象。実に飲みやすく、単独で味わっても飽きのこないバランス感が見事。
ハイボール(ウイスキー&ソーダ)
炭酸が華やかな香りを最大限に広げて、実に美味しいハイボールが誕生する。シンプルなようでいて、フルーティーな味わいにはほんの少々の複雑さが感じられ、さまざまな食事にもよく合うと思う。
アイルランド/アイリッシュウイスキー
『ブッシュミルズ シングルモルト 12年』
現在操業中のアイリッシュウイスキー蒸溜所の中では最古となる蒸留所による『ブッシュミルズ シングルモルト 12年』。アイリッシュウイスキーはピート(泥炭)による燻蒸を行わず、大麦麦芽のほか、未発芽の大麦やライ麦、小麦なども原料に使い、3回蒸留するて滑らかな味わいを実現するというのが基本だが、この『ブッシュミルズ シングルモルト 12年』は未発芽の麦は使わずに品質を高めているのが特徴だ。
グラスに注ぐと、うっとりするような透明感のある水色が美しい。伝統の3回蒸留はそのままに、バーボン樽、オロロソシェリー樽熟成原酒を合わせ、さらに製菓にも使われる甘口マルサラワインの樽で熟成させるという念の入りよう。
そうして生み出されたのは、ドライフルーツやアップルパイを思い出させる家庭的な甘み。それが柔らかなアルコール感と相まって、飲みやすくすっきりとしたプロフィールとなる。ただそこでは終わらず、余韻の部分で複雑な味わいがフワッ。全体としては力強さも感じることができる。
大人のスイートなお楽しみとして、かなり贅沢な気分を味わえるのではないだろうか。
ロック
すっきりさがさらに強調されて、穏やかな甘さに華やかさが加わる。シンプルながらこだわりのバランス感をしっかり感じられて、余韻がたまらない。
ハイボール(ウイスキー&ソーダ)
一気に飲みやすさをアップするソーダ割り。女性でも美味しく飲めるこのフルーティーさは、ハイボールにぴったり。
北アメリカ/ライ・ウイスキー
『ウッドフォードリザーブ ライ』
アメリカ北東部中心に作られているアメリカン・ウイスキーの1つ、ライ・ウイスキーは、ライ麦を主原料とするもの。ライ麦由来の苦味を感じさせる、ワイルドな味わいが特徴だ。「オールドファッションド」や「マンハッタン」などのクラシックカクテルのベースとして使われることから、知る人ぞ知る存在でもある。
『ウッドフォードリザーブ ライ』を生んだ、ウッドフォードリザーブ蒸溜所は、1812年創業で、ケンタッキー州最古の蒸溜所と言われる存在である。
グラスに注ぐと、濃厚な蜂蜜のような水色は、最も濃い黄金色。ストレートで味わうと、そのプロフィールは際立つ黒胡椒のようなスパイシーさが圧倒する、きりりとしたワイルドな味わい。ライ麦の苦味も加わって、酒感が際立っている。
それでいてほのかな洋ナシやリンゴなどのフルーツ感からくる甘みもあるのがおしゃれ。シナモンやヒマラヤスギと称されるアロマも、ハードボイルドなかっこよさを感じる美味しさだ。男らしく味わうのに適している気がした。
ロック
クールに味わいたくなる男感のある味わいは、ロックにするとさらに加速する。このスパイシーさは、アルコールに酔うだけでなく、自分にも酔わせてくれるような、そんな風合いがある。
ハイボール(ウイスキー&ソーダ)
少量生産製品であるこの製品を、ハイボールでガンガン飲むのは、少々もったいない気がしないでもない。しかしキリッとしたアルコール感を感じる濃いめのハイボールは、実に美味しかった。
入手は全国の酒類取扱店などで可能だ。
公式サイトはこちらphoto by 清水 葉子