[第12回]「せんべい」ランキングは亀田を筆頭に新潟勢の強さが際立つ。孤軍奮闘する東京の1社とは?
生まれてこの方、一度もせんべいを食べたことがないという人は、日本人ならおそらくいないだろう。じゃあ、「せんべいって何?」って改めて聞かれると、あなたはきちんと答えられるだろうか。「おかきとせんべいって何が違うの?」「おかきとあられは?」・・・。今日の『日経POSランキング』のテーマは「せんべい」である。この誰しもが毎日のように口にする「せんべい」。『日経POS EYES』でデータを調べるに当たり、記者もまず頭を悩ませたのは、この「せんべい」の分類なのであった。
というのも、『日経POS EYES』の商品分類を見ると、まず大分類に「せんべい」があり、その大分類の下に、小分類として10個ものカテゴリーが存在するのである。その10個とは、
1, せんべい
2, あられ・おかき
3, 柿の種
4, 洋風せんべい・あられ・おかき
5, 揚げせんべい・あられ・おかき
6, 瓦せんべい
7, 小麦粉系せんべい
8, エビせんべい・イカせんべい
9, せんべい詰め合わせ
10, その他せんべい
である。9,10はともかく、この小分類の1~8の区別がきっちりわかる人は多くないのではないだろうか。そこで今回は、このせんべいの分類を意識しながら、ランキングを見ていきたいと思う。
亀田が3位まで独占!強い『柿の種』
それでは今回もさっそく『日経POS EYES』でデータを検索していこう。期間は2020年1月~12月。日経独自収集の全国のスーパーのデータから、まず大分類の「せんべい」を指定して販売金額のトップ10のランキング表が下の(表1)である。要するに、上記1~10の小分類を全部ひっくるめて出したランキングトップ10ということである。
(表1)
今回は、このトップ10の商品が、上記小分類のどれに該当するのかがわかるように、色分けをして、その小分類を一番右の欄に記載した。また表中の「千人当り金額」とは、「千人の客が来店したときに、その商品がいくら売れたかを示す数値」のことで、これにより地域・業態の規模に関係なく、商品の売れ行きを計ることができる。
さて、この表からわかることをいくつか列挙してみよう。
・まず商品別に見ると、圧倒的に強いのが第1位の『亀田 柿の種 6袋 200G』で、千人当り金額で見ると、第2位の『亀田 ハッピーターン 108G』の約2.5倍も売れている。そして第3位もまた『亀田 柿の種 わさび 6袋 182G』である。
このトップ10は、おそらく多くの人にお馴染みの商品で、10銘柄全部食べたことがある人も少なくないのではないだろうか。
・次にメーカー別で見ると、トップ10のうち5銘柄が亀田製菓株式会社(新潟県新潟市)、3銘柄が三幸製菓株式会社(新潟県新潟市)で占められており、それ以外は岩塚製菓株式会社(新潟県長岡市)と株式会社天乃屋(東京・武蔵村山市)だけである。しかもトップ3に至っては亀田製菓の独占である。
・今度は、上記「小分類」別に見てみよう。トップ10で一番多い小分類のカテゴリーは「せんべい」の4銘柄で、次が「柿の種」の3銘柄、そして「あられ・おかき」、「洋風せんべい・あられ・おかき」、「揚げせんべい・あられ・おかき」が1銘柄ずつとなっている。
いかがだろうか。この大分類「せんべい」で見たトップ10は、あなたの予想や実感と合っているだろうか。正直言うと、記者は「柿の種」をほとんど食べないので、これだけ「柿の種」が売れている状況は実はピンと来ない。だがスーパーに並ぶ商品の量や、それを手に取って買っていく様子を見ると、このランキングはとても納得できる内容である。
せんべい、あられ、おかき、柿の種・・・何が違う?!
ところで冒頭に書いたように、今回は少し「せんべい」の分類にこだわってみよう。大分類の「せんべい」は、小分類「小麦粉系せんべい」も含んでいることを考えれば、「穀物全般の粉で作った薄く丸い形状の食べ物」といった定義になるだろう。そして、その中の米を原料とするものが「米菓せんべい」で、中でもうるち米を原料にするものが狭義の「せんべい」、もち米を原料とするものを「あられ・おかき」に分類するのが、どうやら一般的なようである。さらに「あられ」と「おかき」の違いは、そのサイズで、小さいものを「あられ」、大きいものが「おかき」と分類するようである。
ところが細かく調べると、この定義にも「?」が生ずる。例えば、ランキング第2位の『亀田 ハッピーターン 108G』は、小分類では「せんべい」だが、亀田製菓のサイトを見ると、ハッピーターンの原料には、うるち米のほかに少量のもち米も使用されている。もち米が入っていても「せんべい」なのだろうか。
また「柿の種」は、小学館の百科事典やWikipediaによると「あられ・かき餅の一種」とされているが、原料については「もち米またはうるち米」となっている。例えば亀田製菓の「柿の種」の原料はうるち米なので、原料から見れば「せんべいの一種」のように思えるがどうなのだろう。こうした部分は門外漢の記者にはわからない。ちなみに『日経POS EYES』では、「柿の種」という独立した小分類カテゴリーを設けている。原料の違いというよりも、製法の違いと捉えれば、「柿の種」は独立させるのが、記者には一番すっきりと理解できる。おそらくこうした“机上の定義”だけでは、厳密に調べ出すとキリがないし頭が混乱するだけなので、分類談義はここまでにして、『日経POS EYES』の小分類に、実際にどんな商品が入っているのかを、もう少し詳しく見ていこう。
どの小分類でも米菓は新潟勢が強い!
表1に戻ると、小分類の「せんべい」「柿の種」についてはそれぞれ4銘柄、3銘柄が掲載されているが、他の3つの小分類のカテゴリー、すなわち「あられ・おかき」、「洋風せんべい・あられ・おかき」、「揚げせんべい・あられ・おかき」のトップ3には、それぞれどんな商品が入っているのだろう。その結果が以下である。いずれも表1のデータと同様、昨年1年間の全国のスーパーの日経独自収集データから、販売金額でランキングした。
「あられ・おかき」カテゴリーは、
1位 三幸 粒より小餅 あられ 6袋 90G
2位 岩塚 田舎のおかき 9本
3位 岩塚 田舎のおかき 塩味 9本
「洋風せんべい・あられ・おかき」カテゴリーでは、
1位 三幸 チーズアーモンド 16枚
2位 三幸 濃厚チーズ気分 2枚×10
3位 ブルボン チーズおかき 22枚
「揚げせんべい・あられ・おかき」カテゴリーでは、
1位 天乃屋 歌舞伎揚 袋 11枚
2位 亀田 揚一番 醤油味 138G
3位 亀田 こつぶっこ 4袋 110G
ここまで来て、メーカー名にやっと新顔が登場する。「洋風せんべい・あられ・おかき」カテゴリーで3位の株式会社ブルボンである。ブルボンというと、その企業名からして、やはり洋菓子メーカーという印象が強いが、実はその発祥を辿ると、新潟県柏崎市の和菓子の老舗『最上屋』で、ブルボンの前身は『北日本製菓』である。洋菓子が中心だが、米菓も作っていて、3位の『チーズおかき』は1984年発売開始のロングセラー商品である。
『歌舞伎揚』は、唯一“新潟生まれ”じゃない!
読者の皆さんは、すでにお気づきかも知れないが、ここまで登場したメーカーは、“1社を除いて”、すべて新潟県に本社がある企業である。確かに、米菓の話だから、「米どころ新潟」が強いだろうということは想像に難くないが、しかしこれほどまでに新潟に独占されてしまうのかと、改めて驚かされる。亀田、三幸、岩塚、そしてブルボン、これらはすべて新潟の企業である。が、その中にあって唯一1社、(表1)のランキングの第10位にランクインしている『歌舞伎揚』のメーカー、株式会社天乃屋だけが新潟以外の企業なのである。
株式会社天乃屋の本社は東京都武蔵村山市。米菓というイメージとはかけ離れた土地のような気がするが、案の定、甘納豆の製造卸で1953年に設立された会社である。とはいえ設立翌年の1954年には揚げせんべいの製造を始め、1960年には『歌舞伎揚』の開発を始めている。甘納豆から米菓へと転身し、その後は一途に米菓製造に取り組んでいるのだ。天乃屋の米菓商品のラインナップは、揚げせんべい、お米せんべい、焼きせんべい、など多数に及んでいるが、やはり『歌舞伎揚』が同社の看板商品となっている。
『歌舞伎揚』は1969年に発売開始なので、すでに発売50年を超えるロングセラー商品。今回の『日経POSランキング』では、「揚げせんべい・あられ・おかき」カテゴリーで第1位だ。
商品パッケージを見ると、「売上げNo.1 ※出典 KSP-POPを基に自社集計 全国揚げ物(米菓)カテゴリー2009年~2020年販売金額」との記載が大きく施されている。同社ではこれを機に『歌舞伎揚 売上No.1キャンペーン』を展開中。現金5000円や素敵な商品が抽選で当たるご興味のある方は、ぜひキャンペーンサイトまで。
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