[第32回]PBや地元商品だけじゃない!「絹ごし豆腐」で、全国で一番売れている“ナショナルブランド”はどれ?発見、ダントツでクリーミーな絹ごし豆腐!

 街から“豆腐屋さん”が姿を少なくし、多くの人がスーパーで豆腐を買う時代になっても、スーパーに並ぶ豆腐は、いわゆるナショナルブランド製品というよりは、各地の地元のメーカー製やPB商品が多くを占めている。そんな印象があるため、これまで、このコーナーでは「豆腐」はなかなか取り上げにくかった。しかし今回は、そこに足を踏み入れてみようと思う。今回の『日経POSランキング』のテーマは、「絹ごし豆腐」である。

《内 容》

・メーカー別の販売シェアトップはPB!

・ほぼ全国で売れてる豆腐メーカー2社は?

・食べ比べると、ただ1つチーズのような絹ごし豆腐を発見!

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メーカー別の販売シェアトップはPB!

 いつものように『日経POS情報POS EYES』で下調べを開始。商品分類の大分類に「豆腐・豆腐製品」というカテゴリーがあるので、まずはそこから検索していくと、下の(表1)のような結果が得られた。

 直近1年間(2020年5月~2021年4月)に日本経済新聞社が全国のスーパーから独自に収集したデータで見ると、大分類の「豆腐・豆腐製品」の中のには、表のように13種類もの小分類があり、その中で、販売金額のシェア1位が「絹ごし豆腐・ソフト豆腐」で、第2位「油揚げ」、第3位「木綿豆腐」と続いている。しかも「絹ごし豆腐・ソフト豆腐」は、アイテム数でも1000個を超え、「豆腐・豆腐製品」の代表格であることがわかる。というわけで、今回は、豆腐作りの基本でもある「絹ごし豆腐・ソフト豆腐」にフォーカスすることに決め、次に同じデータを使って、どんなメーカーが、どの程度のシェアを持っているのかを探ってみた。この具体的なデータをつぶさに紹介はできないが、予想通りメーカー別シェアの第1位は「自社開発商品(PB)」となっていた。これまで過去31回の連載の中で、メーカーシェアのトップが「自社開発商品(PB)」というケースは1度もなかった。

豆腐売り場には「自社開発商品(PB)」が数多く並ぶ。写真はイオングループのPB「トップバリュ」。

 「自社開発商品(以下PB商品)」というのは、小売りや卸しといった流通業者が独自に企画し、独自のブランドで販売する商品のことで、例えば、コンビニのセブンイレブンが販売する『セブンプレミアム』とか、イオングループが販売する『トップバリュ』(上写真)などがその代表格と言えるだろう。「PB」とは、Private Brand(プライベート・ブランド)の頭文字である。豆腐の場合、そうしたPB商品だけでなく、地元のメーカーのローカル・ブランド商品(下写真)も多く、そうした商品は本稿の企画のような全国ランキングにはランクインしてこないこともあって、これまでは取り上げてこなかったのである。

記者の住むエリアのスーパーでは、地元の諏訪や八ヶ岳界隈の豆腐メーカーの、いわゆるローカルブランド商品が数多く並ぶ。写真の商品は長野県諏訪郡下諏訪町の「松野屋豆腐店」の豆腐。

 ところが、豆腐メーカーの中には、全国に工場や営業所を分散させるなどの企業努力により、ナショナルブランド化した豆腐を販売するところもあったり、また株式会社シージーシージャパンのような企業が、OEM供給を受け独自ブランド『CGC」』(下写真)で豆腐を販売するなど、豆腐売り場にはいろいろ面白い光景も見ることができるので、今回はこの“扱いにくい”豆腐に焦点を当ててみようと考えたのである。

『CGC』ブランドの絹ごし豆腐。こちらの製造元は群馬の「相模屋食料株式会社。

同じく『CGC』ブランドの絹ごし豆腐。こちらの製造元は、茨城のタカノフーズ株式会社の鬼怒川工場である。

全国ブランド『さとの雪』『男前豆腐店』etc.

 さて前置きが長くなってしまったので、さっそく「絹ごし豆腐・ソフト豆腐」の販売状況を、『日経POS情報POS EYES』で調べてみた。データは(表1)と同様、直近の1年間の日本経済新聞社による全国スーパーからの独自収集のものを使用。販売金額によりトップ20商品を表にまとめたものが、下の(表2)である。

ランキングトップ3の商品。これらはさすがに、どのスーパーででも手に入れやすい。

 このトップ20に、最も多くの商品をランクインさせているメーカーは、「さとの雪食品株式会社(徳島県鳴門市)」で、(表2)の水色の部分の6商品がランクインしている。「日本の伝統食品の豆腐を手作り本来の味そのままに全国の皆様の元へお届けする」をモットーに、四国に本社がある会社だが、東京・大阪・名古屋・御殿場と、4つの営業所を持ち、ほとんど全国に豆腐を販売している。

 『日経POS情報POS EYES』では、地域別に販売データを検索することもできるが、(表2)のマーカー別のデータを「地域別」に出力してみると、「さとの雪食品」が販売シェア上位10社に入ってこない地域は北海道と東北だけで、その他の8地域ではすべて上位10社に入っていることが、その強さを物語っている。

記者の住むエリアでは、『さとの雪』はなかなか見つけられず、トップ20にランクインしている商品を購入することはできなかった。唯一手に入れた『さとの雪』はこれだけだった。

 ランキングに戻ろう。トップ20に「さとの雪」に次ぐ多くの商品をランクインさせているメーカーは3社あり、いずれも3商品をランクインさせている。その3社とは、第1位、第4位、第5位と上位を占める「男前豆腐店株式会社(京都府南丹市)」、『おかめ豆腐』でも有名な「タカノフーズ株式会社(茨城県小美玉市)」、記者が住む地域では最も多く商品が陳列されていた「相模屋食料株式会社(群馬県前橋市)」である。

「男前豆腐店」の商品は、パッケージデザインや商品形状で、売り場では非常に目立つ。

 中でも、「男前豆腐店」という会社は、本社こそ関西の京都府にあるが、工場を京都・青森・茨城・山梨に持ち、前述した地域別の販売データでも、「さとの雪」を上回る北海道を除く全国9地域で上位10社にランクインしている。ランキング表を見ても、第1位の同社の『男前豆腐店 特濃ケンちゃん 充填豆腐 90G×3』のカバー率は、全商品の中で、ただ1つだけ50%を超える66.4%と、群を抜いて高い数値を示している。ちなみにカバー率の第2位も同社の商品で、全国的に強い販売力を持つことがその数字からもわかる。

タカノフーズの『おかめ納豆』、『おかめ豆腐』ブランドは、東日本から中京地区までの消費者には馴染みのある食品ブランドである。

 茨城の「タカノフーズ」は、納豆ブランド『おかめ納豆』同様に、東日本を中心としたマーケットを持つが、名古屋を中心とした中京エリアも販売エリアとしているのが強みである。群馬の「相模屋食料」も東日本が中心の販売だが、こちらは近畿エリアにも強く、同じ豆腐メーカーの日本ビーンズ株式会社(群馬県伊勢崎市)や株式会社京都タンパク(京都市伏見区)をグループ傘下に抱えていることが、販売エリア拡大に寄与しているのかもしれない。

特に理由もなく、いつも買うブランドを決めている人も多い豆腐だが、いろいろ食べ比べてみると違いがあって面白い。以下の食べ比べの記事も参考にして欲しい。

 冒頭で、豆腐の販売では、PBやローカルブランドが強いという話をしたが、それに対して、今挙げたようなメーカー、特に「男前豆腐店」や「さとの雪」は、豆腐業界のナショナルブランド(NB)商品と呼ぶべき商品である。

『相模屋 とろける生とうふ』は、和製クリームチーズだ!?

 今回の企画は、内容的にマーケット寄りなものになってしまったが、最後に少々商品に寄って書いてみたい。記者が住む八ヶ岳南西エリアには、比較的大きなスーパーが9店舗(セブン&アイHD系が弱い)あるのだが、これらを全部買い回っても、陳列に偏りの大きい「豆腐」という商品を買い揃えるのは非常に困難だった。それでも何とか、トップ20の商品では第1位~第5位と、第7位、第16位、第17位の8商品を買うことができた。

今回購入した「絹ごし豆腐」。中央の皿に盛っているのが、第7位の『相模屋 とろける生とうふ 絹』である。

 今回は、これらを全部食べ比べて、印象に残った2点についてだけ言及したいと思う。

 1点目は、大豆の味がとても濃厚で、かつ口当たりがなめらかで、他とは次元の違う商品が2つあったこと。この2つの商品とは第7位の『相模屋 とろける生とうふ 絹 100G×4』と第16位の『日本ビーンズ 国産大豆の濃い豆腐 充填豆腐 200G×2』である。特に前者は、名前のとおり、とろけるように柔らかく、それでいて濃厚で、まるで上質なクリームチーズを食べているような感じだった。この味は、他では味わえないものだったが、それに近かったのが、後者の日本ビーンズの商品。こちらも名前のとおり濃い味わいが特長で、前者ほどのクリーミーさはないが、大豆の風味がしっかりしている。この2つ商品の味が近いのは、このメーカー2社が、同じ相模屋のグループ会社であることに関係があるのだろうか。いずれにせよ、これらの豆腐は、あまり調理せずに、そのままおつまみにしたり、サラダ、あるいはサンドイッチに挟んで食べたりしたいものである。

この2商品は、本当に大豆の味が濃く、風味が高く、なめらかな味わいの豆腐だった。同じ相模屋グループ系列の商品である。

 2点目は、やはり大豆の味わいについてなのだが、これら2つほど濃厚な感じはしないのだが、何というか“少し違う”アプローチで、大豆がしっかり味わえるのが、男前豆腐店の豆腐だった。説明が難しいのだが、さきほどの2つがチーズのような洋風な味わいがあるとするなら、こちらの男前豆腐店の豆腐は、やはりどこまでいっても“和”の感じがするのである。だから、こちらの食べ方はサラダやサンドイッチではなく、あくまでも「冷や奴」がいい感じがする。

パッケージのイラストもユニーク。大豆の風味が良く、日本の豆腐という印象が強い「男前豆腐店」の豆腐である。

 以上2点、とても個人的な試食感であるが、豆腐選びの1つの参考にしていただければ幸いである。日本人にはとても身近で健康的な食品の「豆腐」、あなたも少し意識的に食べ比べて、この夏のタンパク源として、食生活に積極的に取り入れてみてはいかがだろうか。(写真・文/渡辺 穣)

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渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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