[第33回]“二刀流”も食べる話題の「グミ」!もともとコラーゲン入りの健康食品だが、”プラスα”の魅力で、大人マーケットが拡大中!
お皿の上に散りばめられた色とりどりのグミを見ていると、どこか童心をくすぐられる。もともと、グミは子供用のおやつなので、そう感じるのは当たり前なのかもしれないが、いまやグミは“子供用”から“大人用”へと、確実にその守備範囲を拡大しているようだ。なんせ、あの“二刀流”の大リーグのスターも試合中に口にしている(下写真)のだ。2000年以降、市場規模も急拡大している。今回の『日経POSランキング』は、この「グミ」を取り上げたい。
《まとめ》
・世界初のグミを作ったハリボー社の先見の明
・5年前も、今も、変わらずトップの商品はコレ!
・ビタミンC、食物繊維、コラーゲン・・・、大人グミは健康で勝負!
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子どもの歯の病気予防のため世界初のグミ『ハリボー』誕生
世界初のグミは、1920年ドイツで作られたらしい。当時、ドイツでは強く噛まないといけない食べ物が少なくなったことで歯の病気にかかる子どもが増えたため、それを予防し、子どもの咀嚼力を強くするため、まるでゴムのように弾力があって固い「グミ」が作られたのだ。だから、グミの語源は「ゴム(Gum)」の形容詞「グミィ(Gummy)」で、世界で初めてグミを作った人がドイツのボン在住のハンス・リーゲル氏。ハンス・リーゲル・ボンの頭文字を取って、ハリボー社(HARIBO)が誕生した。
販売状況については、のちほど詳述するが、このハリボー社のグミは、今でもよく売れている。上の写真のように、パッケージの左上には、「ヨーロッパNo.1グミ」と誇らしく記され、「合成着色料不使用」とも書かれている。表側には「1922年生まれ」とあるが、裏側には「1920年ドイツで生まれたグミブランド」とも書いてある。つまりブランドは1920年生まれで、この『ハリボー ゴールドベア』は1922年に誕生したということだろうか。いずれにせよ、100年の歴史を持つ世界のロングセラーグミである。
グミというお菓子は、「果汁などをゼラチンで固めたお菓子」の総称なので、原材料も、水飴、砂糖、ゼラチン、濃縮果汁などが主成分である。『ハリボー ゴールドベア』には、パイナップル、レモン、ラズベリー、リンゴ、オレンジ、イチゴの6種類のフルーツ味のグミが入っていて、食べてみると確かに固い。この固さは、他の日本製のグミとは根本的に異なる発想で生まれたものだということを表している。
いち早く「大人」もターゲットに入れたハリボー社
ハリボー社のサイトを見ると、「HRIBO100年の歴史」というコーナーがあって、これを読むだけでも、かなり面白い。記者が一番感心したのは、当初『子どもたちをハッピーにするHaribo』というスローガンだったのに、おそらく1960年代頃には、そのスローガンに『大人もね』というセリフが付け加えられていること。21世紀の日本で今、グミが大人のおやつとして売られていることを、まるで予言するかのようである。
さて、グミのウンチク話をしていても切りがないので、いつものように『日経POS情報POS EYES』を使って、「グミ」の販売状況を調べてみよう。
5年前も今も、グミの販売金額トップはコレ!
上の(表1)は、先月(2021年4月)1ヶ月間の「グミ」の販売ランキングである。我々が通常「グミ」と呼ぶお菓子は、『日経POS情報POS EYES』の商品分類では「グミキャンデー」という小分類カテゴリーに属する。日本経済新聞社が全国のスーパーから独自に収集したPOSデータから、、その「グミキャンデー」カテゴリーの2021年4月分をソートし、販売金額によりランキングTOP10をまとめたのが、この(表1)である。
先ほど触れたハリボー社の『ハリボー ゴールドベア』が第5位にランクイン。その他、TOP10に明治の商品が4個、ブルボンとカンロの商品が1個ずつ、残り3個は、名前から見て、いかにも子ども向けの玩具的な商品やキャラクター商品となっている。子ども向け商品は、おそらく商品の回転が速いだろうと思い、参考のため、5年前の2016年5月の同じランキングも調べた結果が、以下の(参考)という表である。
この表と、(表1)を見比べると、いくつかはっきりとした特徴が見て取れる。やはり予想通り、(表1)に3個あった“子ども系”商品の姿はなく、その分、明治の商品が数多くランクインしており、なんとTOP10のうち7商品が明治で占められている。また当時は、味覚糖や春日井といったメーカーの商品もランクインしている。
さらに、5年前も今も、同様にTOP10にランクインしている商品が3個だけ存在する。それが紫色に着色した3商品、すなわち『明治 果汁グミ ぶどう 51G』、『明治 果汁グミ 温州みかん 51G』、『ブルボン フェットチーネグミ イタリアングレープ味 50G』の3つである。
この3つの商品名を頭に入れつつ、最後に、データの期間を直近の1年間(2020年5月~2021年4月)に伸ばした同じランキングTOP10が、下の(表2)である。
直近の1年間でトップだったのは、またしても『明治 果汁グミ ぶどう 51G』である。驚くべきことに、本稿の3つのランキング表ですべてトップの座をキープしている。そして上記“3強”は、やはりここでも強く、『ブルボン フェットチーネグミ イタリアングレープ味 50G』は3位、『明治 果汁グミ 温州みかん 51G』も10位にランクインしている。
また、この直近1年間の特徴としては、いくつかの商品を詰め合わせにしたアソートタイプがランクインしていることも挙げられる。具体的には第2位の『明治 ポイフル エンジョイパック 9袋 126G』や第6位の『明治 果汁グミ アソート 12袋 163G』である。
明治が、売れ筋ブランドである『果汁グミ』や『ポイフル』を、家庭用に大きなアソートパックにして、よりお得感を打ち出して売り出しているということだろう。そうした“アソート化”の動きは、チョコレートで、より顕著に現れている。
明らかに子ども向けの商品が第4位、第7位にランクインしている一方で、子どもと大人のどちらもハッピーにする『ハリボー ゴールドベア 80G』も、きっちり5位をキープしている。
ライバルは『明治 果汁グミ』と『ブルボン フェットチーネ』
大人っぽい、子どもっぽいという観点からすれば、冒頭で大リーガーの大谷選手が食べていた『明治 ポイフル』は、比較的子どもっぽい側の商品といえるだろう。アソートタイプが第2位にランクインしているが、個包装にゲームが掲載されていたり、可愛らしい動物のキャラクターが描かれていたりと、“子どもウケ”を狙っていることがわかる。
それに対し、第1、3、8、9、10位の各商品は、比較的大人寄りにターゲットを設定した商品のように見える。中でも、記者が一番“大人意識”を感じる商品が、第3位にランクインしている『ブルボン フェットチーネ イタリアングレープ味 50G』である。リボンのような形状のパスタ「フェットチーネ」を意識したネーミングやパッケージに記載された「アルデンテな噛み心地」という表現、他に比べ、少し酸っぱい“大人な”味わい。さらに「ビタミンC入り」や「食物繊維入り」という健康志向にアピールする特長など、大人の、特に健康や美容意識の高い女性をターゲットにしているムードが漂う。
この『ブルボン フェットチーネ イタリアングレープ味 50G』と同じぶどう味で、パッケージの雰囲気もどことなく似ているが、ずっと第1位に君臨する『明治 果汁グミ ぶどう 51G』である。この両者は、日本のグミ市場の良きライバル商品だと言えるだろう。
ただし日本のグミ市場は明治が草分け的存在であり、子供用のお菓子という存在だけではなく、大人のおやつ市場としての先鞭を付けたのも明治である。また「果汁100」とか「噛むコラーゲン」といった言葉で、健康意識の高い大人を意識した商品作りをしてきたのも明治。グミに含まれるゼラチンは、コラーゲンの一種なので、どのグミもコラーゲンが入っていることには変わりはないが、それをあえてセールスポイントにしたのも明治なのである。また『果汁グミ』は、その特長として、「果汁の色をそのまま使用」し、着色料を使っていないこともパッケージ裏でアピールしている。
今回、売り場に行ってみると、この2つのライバル商品は、どちらも全く同じように「10%増量キャンペーン中」だった。この両者は、互いをきっちりとライバル関係として意識していることがうかがえるのである。
かつては、ビジネスパーソンの気分転換には「ガム」という時代があった。しかし今や、そのガムに代わって「グミ」がその地位を確実にしつつある。ガムよりも、腹持ちが良く、コスパも良く、しかも健康にもいいとなれば、さらに市場は拡大しそうである。大人をターゲットに定めたグミも、さらに多く登場することだろう。グミは、ハリボー社が“予言”したとおり、今まさに「大人もハッピーに」しているお菓子なのである。(写真・文/渡辺 穣)
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