[第72回]『午後の紅茶』が圧倒!「ペットボトル入り紅茶飲料」販売金額ランキング。新商品限定でも強さ変わらず。免疫機能維持をサポートする機能性表示食品も登場!
この時期になると、スーパーやコンビニで見かけるペットボトル入りのドリンク類売り場に、赤い「HOT」ドリンクのコーナーが目に付くようになる。お茶やコーヒー、紅茶は、そろそろ温かくして飲みたくなる季節。今回のテーマは「ペットボトル入り紅茶飲料」である。
ペットボトル入りの紅茶と聞いて、誰しもが真っ先に思い浮かべるブランドは、おそらく『午後の紅茶』ではないだろうか。確かに、『紅茶花伝』や『クラフトボス』も好きな人は多いが、売り場をちょっと見て回れば、『午後の紅茶』の棚の面積は他を圧しているからだ。
『午後の紅茶』は20位以内の商品だけでシェア60%超!
それでは感覚だけでなくデータを確認してみよう。『日経POS情報POS EYES』の商品分類で「ペットボトル入り紅茶飲料」をセレクトし検索するわけだが、今回は使用するデータの期間を短めにして、できるだけ“新しい動き”を見てみることにした。というわけで、使用するデータは、日本経済新聞社が全国のスーパーから独自に収集した月別の最新データ、つまり先月9月の1ヶ月間のPOSデータ。それを「ペットボトル入り紅茶飲料」で検索し、販売金額の上位20位をランキングしたのが、下の(表1)である。
これを見ると、やはり“感覚”は間違っていなかったと言えるだろう。緑色に着色した部分は、すべてキリンホールディングス株式会社(東京・中野区、以下キリン)の『午後の紅茶』ブランドの商品である。TOP20中に11商品も圧倒的だが、TOP12のうち10商品を占めているのは迫力満点である。特に第1位と第2位の2商品だけでシェアは20.6%、ランクインしている11商品のシェアだけでも、すでに60%を超えていることがわかる。かつてのキリンビール1強時代を彷彿とさせる、まさにガリバー型の1社独占状態である。
そして、このキリンに続くのが、『紅茶花伝』ブランドの日本コカ・コーラ株式会社(東京・渋谷区、以下コカ・コーラ)、さらに『リプトン』や『クラフトボス』ブランドを持つサントリーホールディングス株式会社(大阪市北区、以下サントリー)である。
TOP20にランクインしている商品で、この3社以外の商品は、第20位にただ1つだけ。株式会社ダイドーグループホールディングス株式会社(大阪市北区、以下ダイドー)の『ダイドー ピエール・エルメ 贅沢香茶 ピーチミックスティー』である。
新商品限定でも強い『午後の紅茶』、クセになる『ダイドー ピエール・エルメ』
先ほど今回は“新しい動き”を見たいと書いたが、直近1ヶ月の(表1)でも、やはり上位は従来からの定番商品に独占されてしまうので、ここからさらに今回は、『日経POS情報POS EYES』の「新商品限定」機能を使って、設定したデータ期間の13週前以降に登場した商品に絞り込んでみた。つまり、設定したデータ期間が今年9月なので、13週遡って今年5月31日以降に登場した商品(厳密には、JANコードが新しく発番された商品)だけに限定した販売金額ランキングを作成したのである。それが下の(表2)だ。
新商品数は全部で19商品。メーカーによりリニューアルのタイミングが違うので、このデータだけで何かを語ることはできないが、少なくとも、この夏の新登場の「ペットボトル入り紅茶飲料」の人気を見る目安にはなるだろう。そして、ここでも第1位はキリンの『午後の紅茶』ブランドで、全19商品でも5商品をキリンが占めている。驚くべきは、この第1位の『Kビバレッジ 午後の紅茶 おいしい無糖 香るレモン PET 500ML』(下写真)は、新商品の中でも発売日が新しく、わずかな期間で新商品の第1位に駆け上がっていることである。しかも(表1)のランキングでも第12位に姿を現しているのだ。
そのキリンを上回る新商品数を出しているのがサントリーで、19商品中6商品。うち『リプトン』ブランドが2商品、『クラフトボス』ブランドが4商品となっている。ダイドーも4商品と頑張っている(下写真)が、その一方で、(表1)と見比べて、いかにも新商品が少ないのがコカ・コーラ。第12位に1つ存在しているだけだ。しかもこれは新商品というよりも、既存の商品を4本でアソート売りしたもののようである。先ほども書いたが、これは単純に新商品発売のタイミングが違うだけのことなのかもしれない。
売り場では免疫機能維持に注目したさらなる新商品が・・・!
ここまで、「ペットボトル入り紅茶飲料」のこの夏の動きを見てきたが、結局キリンの『午後の紅茶』の強さだけが目立ってしまう結果となった。通称“午後ティー”とも呼ばれる、この『午後の紅茶』。紅茶の本場イギリスの習慣「アフタヌーン・ティー」を直訳したのが、そのネーミングである。日本で言う“3時のおやつ”時に、イギリスの貴族たちが紅茶を片手にスコーンやケーキをいただく習慣「アフタヌーン・ティー」を日本にも根付かせたいという思いが込められており、当時イギリスでこの習慣を広めたといわれる公爵夫人アンナ・マリアの肖像(下写真)が、『午後の紅茶』のボトルには描かれている。
『午後の紅茶』には、スリランカ産の紅茶葉が使用されているが、今年7月の日本食糧新聞の記事によると、日本に輸入されるスリランカ産の紅茶葉の、なんと約4分の1近くが『午後の紅茶』用ということなのだ。それだけでも、この飲料の生産量の莫大さがわかるというもの。『午後の紅茶』が初めて発売されたのが1986年。今年は発売35周年である。
さて、今回もいつものように、あちこちのスーパーに実際に足を運んで、売り場の様子を観察してきたが、最後に今、売り場で最も目立っていた商品をご紹介しよう。それは、実は(表1)や(表2)にランクインしている商品ではなかったのである。とういうのも、(表2)よりもさらにもっと新しい『午後の紅茶』(下写真)が売られていたからなのだ。
その新商品とは、『キリン 午後の紅茶ミルクティープラス』。10月12日に発売開始となった商品で、キリンお得意の「プラズマ乳酸菌」を配合することで、「健康な人の免疫機能の維持をサポートする」機能性表示食品なのである。売り場には「日本初」と書かれたポップが立っていたり、同時発売された同じ機能性表示食品の『キリン生茶 ライフプラス免疫アシスト』と一緒に棚を使用したりで、とにかく今、間違いなく最も目立つ商品だった。
新型コロナウイルスの感染対策が不透明な世の中で、自分の免疫機能をしっかり維持することは、全ての人の関心事。特にミドルからシニア層の顧客層開拓には威力を発揮しそうな商品である。消費者の免疫機能と同時に、キリンのシェアの維持もサポートする商品と言えそうである。(写真・文/渡辺 穣)
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