[最終回]「ほぼ全アルコール飲料」の販売金額ランキングTOP30!やはり強いのは、アルコール飲料界の“両横綱”だったが、その間に割って入った商品があった・・・!

 昨年12月22日に第1回「今、日本で一番売れているワインはコレ!」をアップしてから、この『日経POSランキング』も今回で73回目を迎える。そして今回を以て本連載は終了ということになった。第1回がワインなら、最後はこれでいこう。というわけで、今回のテーマは「今、日本で一番売れているアルコール飲料はコレ!」。ワインもビールも、日本酒も、ウイスキーも、焼酎も、梅酒も、中国酒も、何でもござれである。全部ひっくるめて、その中で一番売れているのは何なのか?

 日本で一番売れているアルコール飲料、これはちょっと考えると、多くの人が割と簡単に正解を出すのではないかと思う。では、その答えを紹介する前に、今回、どういうジャンルのアルコール飲料を調査対象にしたのか、そのカテゴリーと、カテゴリー別の販売状況を見てみよう。
 『日経POS情報POS EYES』の商品分類で見ると、今回取り上げたのは、大分類の「日本酒」「ビール」「ウイスキー・ブランデー類」「焼酎類」「ワイン」「リキュール」「スピリッツ」「中国酒」「カクテルドリンク類」「発泡酒」という10カテゴリーの商品で、取り上げていないのは「雑酒」という大分類カテゴリーだけである。この「雑酒」にはどういうお酒が含まれるかというと、お正月に飲む甘酒とか、ひな祭りのお祝いに使う白酒、さらに薬用酒、マッコリ酒、料理用のお酒などのその他雑酒である。「雑酒」を含めていないため、「“ほぼ”全アルコール飲料」という言葉を今回は使用している。そして、まず今回取り上げる10の大分類カテゴリー別で、販売金額ランキングを作成したのが下の(表1)である。使用したデータは直近1年間、すなわち昨年10月から今年9月までの1年間、日本経済新聞社が独自に全国のスーパーから収集したPOSデータである。

 この表を見てわかるとおり、この国のアルコール飲料消費の半分近くはビールと発泡酒で占められている。今のところ、ビールよりも発泡酒の方が販売金額が上回っているが、昨年10月の酒税法改正により、これから段階的にビールにかかる税金が下がってくるにつれ、ビールと発泡酒の順位は逆転する可能性がある。また表の第3位に位置するカクテルドリンク類だが、その約9割は缶チューハイで占められている。缶チューハイも、この酒税法改正により増税にはなるものの、その上げ幅はわずかで、ビールに比べると、価格的な優位性は今以上に際立ってくる。そうなると、このカクテルドリンク類というカテゴリーの順位も、今後上昇する可能性を秘めている。いずれにせよ、第1位の発泡酒から第4位の焼酎類まででシェアの約4分の3を占めているわけで、ザックリ言うと、「アルコール飲料消費全体の4分の3は、ビールと焼酎だ」と言っても間違いではあるまい。

よく売れるビールは24本入りの箱売り、焼酎は1.8L入りの紙パック売りがスーパーでは普通になっている。

 一方、残りの4分の1の中に、日本酒、ワイン、ウイスキー・ブランデー類、リキュール、スピリッツ、中国酒がひしめきあっていて、どのカテゴリーもシェアは一桁にとどまっている。冒頭にリンクを張った本連載の第1回の記事では、「輸入ワインの関税が引き下げられつつある中で、ワインの輸入量・消費量が増えている」ことを指摘したが、それでもワインのシェアはまだ8.0%、日本酒も8.1%と、醸造酒の人気はイマイチである。またハイボールブームによりウイスキー人気が高まりつつあるとはいえ、シェアは5.9%に過ぎない。度数の強い酒も人気がでないのだろうか。やはり軽く、手軽に飲めるビールや缶チューハイがよく売れるのである。

11位から30位の9割は発泡酒かビールで占められている!

 さて、次はいよいよ本題である。では「この10のカテゴリーに属する、ほぼ全アルコール飲料の中で、今、最も売れている商品は何なのだろうか」。(表1)が大きなヒントとなって、多くの人はもう答えがわかったのではないだろうか。というわけで、今度は、同じ直近1年間のデータで、この10の大分類を設定して、商品別にランキング表を作成してみた。その第11位から第30位までを掲載したのが下の(表2)である。

 まず何より、表の色分けに注目して欲しい。薄い黄色は発泡酒、オレンジ色はビールのカテゴリーを表す。この2つのカテゴリーで第11位から第30位の20品中18商品を占める。本当にビールと発泡酒は強いことがわかる。それ以外のカテゴリーでは、赤と青が1つずつ。 

ハイボールブームで売上げを伸ばした「サントリー 角瓶」は、「ウイスキー・ブランデー類」カテゴリーから唯一第11位にランクイン。

 唯一第11位にランクインしている赤のカテゴリーは「ウイスキー・ブランデー類」で、商品はサントリーホールディングス株式会社(大阪市北区、以下サントリー)『サントリー 角瓶 ウイスキー 瓶 700ML』、いわゆる“サントリー角瓶”である。この“角瓶”がなぜ売れているかについては、本連載の第7回『日本のウイスキーはハイボールの材料として売れている』に詳しいので、興味のある方は覗いてみて欲しい。

焼酎だけでなく、日本酒も1.8L紙パック入りの商品が棚の多くを占める。お酒好きには味気ない景観だ。

 また唯一第24位にランクインしている青のカテゴリーは「焼酎類」で、商品はアサヒビール株式会社(東京・墨田区、以下アサヒ)『アサヒ かのか 麦焼酎 甲乙混和 25度 紙パック 1.8L』である。いつの頃からか、スーパーで売っている日本酒や焼酎は、まるで牛乳のような四角い紙パック入りが主流となり、とても味気ない売り場の景観を醸し出している(上写真)。調べてみると、アサヒはビールだけでなく、結構多くの焼酎も製造・販売していることがわかって驚きである。
 さて次はいよいよ第10位から第1位の発表である。

「発泡酒」カテゴリーで最も売れているのは、キリンの「本麒麟」。第5位にランクイン。

ビールの両雄「スーパードライ」と「一番搾り」の間に割り込んだのは・・・?

 というわけで、下の(表3)が第1位から第10位商品である。先ほどと同様、黄色とオレンジ色が大半を占める。唯一1つ第7位に青のカテゴリー「焼酎類」が入っているのも先ほどと同様。ただ1つ違うのは、第3位を空欄にしてあることだ。

  日本のビール市場と言えば、やはりその両雄はアサヒの「スーパードライ」キリンホールディングス株式会社(東京・中野区、以下キリン)「一番搾り」で間違いない。その辺りのことは、本連載第20回「4大ビールメーカーをのぞくビール」の記事に詳しいので、興味のある方は読んでいただければと思う。上の(表3)でも、第1位、第2位には「スーパードライ」が、第4位には「一番搾り」がランクインしている。ほぼ全アルコール飲料の中で最も売れている商品は、アサヒの「スーパードライ」ということになる。

「予想通り!」と思った方も多いことだろう。やはり最も売れているアルコール飲料は、これだった!

ところが今回、全く予想していなかったのが、この“日本のお酒の両横綱”とも言うべき「スーパードライ」と「一番搾り」の間に、第3位で割って入った猛者がいることだ。この空欄の答えは、

第3位の回答はこれ。写真は9oomlパックなのでサイズ違いである。紙パックながら、この商品には、どことなく高級感が漂う。

『霧島 黒霧島 いも焼酎 本格焼酎 乙 25度 紙パック 1.8L』である。

 この商品のメーカーは宮崎県都城市に本社がある霧島酒造株式会社(以下、霧島酒造)1916年創業なので、100年以上の歴史を持つ老舗の焼酎メーカーである。同社は特に本格芋焼酎については、この「黒霧島」のパッケージ裏にも記載があるが、原材料のさつまいも、仕込み水、米麹、そして醸造・蒸留する工場すべてにこだわりを持ち、おいしさを追求している。企業モットーは「焼酎で、世界をどこまでも美味しくする」

霧島酒造のサイトのトップページ。

 最後に、もう一度(表3)に戻ろう。第1位と第2位はサイズ違いのアサヒ「スーパードライ」、第3位に霧島酒造の「黒霧島 いも焼酎」、第4位はキリンの「一番搾り」、そして第5位に発泡酒カテゴリーのトップとなるキリンの「本麒麟」と続く。念のため、空欄を埋めた(表3)の完成形を下に載せておこう。


 さて冒頭にも書いたとおり、本連載はこれで終了となる。約10ヶ月間、全73回の短い連載だったが、楽しんでいただけただろうか。ここまで読んでいただいた読者のみなさまには感謝を申し上げる。またこの連載により、普段スーパーで目にする何気ない商品に、今までよりも少し興味を持っていただけたり、レジで登録する「POS情報」が少し身近に感じていただければ、記者としてはこの上ない喜びである。(写真・文/渡辺 穣)

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渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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