[第16回]売れ行き好調の「キムチ」のトップ10はどれ?腸内環境のためには“自然発酵”キムチを見分けよう!

 今回の『日経POSランキング』のテーマは「キムチ」である。何でもコロナ、コロナとは言いたくはないが、この1年間の消費動向は、やはりコロナ禍による生活習慣の変容から大きな影響を受けていることは紛れもない事実だ。なかでも外出自粛による「内食」の増大傾向は、様々な食品の消費拡大を後押ししている。その“追い風”に乗って、漬物の売れ行き、特にキムチの売れ行きが好調だという。昨年8月8日付日本食糧新聞の記事には、昨年3月以降のキムチの販売金額が、前年同月比で「異常値」と表現されるほど大きな伸びを示していると書かれている。だとすれば、その昨年3月以降、一体どの「キムチ」が売れているのか、さっそく『日経POS EYES』で調べてみた。

キムチ・朝鮮漬のトップシェアは東海漬物

 データの期間は、昨年3月から今年2月までの1年間。日経が全国のスーパーから独自収集したPOSデータを使い、商品分類の「漬物」という大分類カテゴリーで検索すると、「キムチ・朝鮮漬」「梅干し」「たくあん漬」といった様々な漬物の小分類が31種類もあることがわかった。そこで驚かされたのは、そのそれぞれの漬物の販売金額シェアを見ると、これだけ数多くある漬物の中で、最も大きなシェアを占めているのは、「キムチ・朝鮮漬」カテゴリーだということ。金額ベースで「漬物」全体の約27.7%を占め、後続の「梅干し」「たくあん漬」を大きく引き離しての断トツなのである。日本の漬物販売のシェアトップが、お隣り韓国の漬物だとは考えてもいなかったのだ。シェア断トツの「キムチ・朝鮮漬」が「異常値」と称されるほど売上げが伸びれば、それは漬物全体の売れ行きが好調とされるのは当然の成り行きである。

 そこで上の(表1)を見ていただきたい。これは同じ昨年3月から今年2月までの、全国のスーパーから日経が独自に収集したPOSデータを、先の小分類「キムチ・朝鮮漬」カテゴリーで検索し、販売金額でランキングトップ10をまとめたものである。

 これを見ると、まずトップ10の10商品に、メーカー(あるいは輸入販売会社)が9社もあることが目を引く。つまり市場シェアが割とばらけていることが想像できるのである。そこで、このデータをメーカー別の金額シェアで見ると、シェア20%に乗せているのは、第1位の東海漬物株式会社(愛知県豊橋市、以下東海)の21.9%だけで、少し差が開いて第2位が株式会社ピックルスコーポレーション(埼玉県所沢市、以下ピックルス)の14.0%、第3位が株式会社美山(千葉県船橋市、以下美山)の12.3%と続く。またシェア6.9%で第6位の株式会社フードレーベル(埼玉県所沢市、以下フードレーベル)は、2016年より第2位の株式会社ピックルスコーポレーショングループ傘下となったため、ピックルスグループ全体として見れば、シェアが20.9%となり、トップの東海に肉迫することになる。「キムチ」業界の上位メーカーの状況がおわかりいただけただろう。

ランキングのトップ5。右端の第3位『フードレーベル 牛角 韓国直送キムチ 330G』だけが、“発酵する”キムチで、他は“発酵しない”国産キムチ風浅漬け。

腸活のためなら、“発酵する”キムチを!

 次は、商品に目を転じてみたい。今回、記者はまずトップ5の商品を購入してみた(上写真)。ここで気が付くのは、5つのうち4つはプラスティックのトレイに入っているが、ただ1つだけ、第3位の『フードレーベル 牛角 韓国直送キムチ 330G』だけがボトルに入っている。そして、この商品だけが「韓国直送品」で、「韓国直輸入・熟成発酵キムチ」と書かれたマーク(下写真)が付いている。さらにこの商品だけが、賞味期限からの日数により、「酸っぱさの目安」の「弱」「中」「強」というような食べ頃を示すインデックスのようなもの(下写真)がボトルにプリントされているのである。

韓国直輸入で、熟成発酵キムチに付く、「キムチくんマーク」。韓国政府認定の証だそうである。(韓国農水産食品流通公社の公式サイトより)

食べ頃を示すインデックスが付いているのも、“発酵する”キムチの特徴である。

 そこで、味の比較も兼ねて、記者はさらに「キムチくんマーク」のついたキムチを3商品を追加で購入した。その3商品とは、

   ・ランキング第6位の『大象 宗家(チョンカ)キムチ 380G』

   ・『美山 熟旨キムチ 500G』

   ・『CGC 韓国直輸入キムチ 400G』

 やはりいずれもボトル入りで、どれもボトルに“キムチくんマーク”と“食べ頃インデックス”がプリントしてある。要するに、これらの韓国直輸入キムチは、購入後もこのボトルの中で熟成(乳酸菌発酵)し、日々その味や色が変化していくものなのである。それに対し、いわゆる国産キムチは、発酵しない漬物である。なので“食べ頃インデックス”も必要ないし、商品によっては、色の変化がわからないように、ご丁寧に色素成分まで入っているのだ。

韓国農水産食品流通公社の公式サイトにある、「キムチくんマーク」についての説明文。

 韓国産キムチと国産キムチの違いや、発酵の有無などについては、ネットで検索すると、様々な情報が溢れていて、それらを眺めていればおおよそ理解はできるが、先に書いた直輸入キムチのボトルに付いているマークの意味も含め、韓国農水産食品流通公社の公式サイトには、キムチの詳しい情報が掲載されている。興味のある方は、一度覗いてみると面白い。韓国食品の情報が詳しく掲載されている。

 キムチはもともと韓国の保存食として生まれ、主原料である塩漬け白菜に様々な薬味(唐辛子粉、生姜、ねぎ、大根、塩辛など)を混ぜて漬け込み発酵させた食品である。唐辛子の強い刺激、野菜の甘味、乳酸発酵による酸味・うま味と塩辛さが複雑に混じり合った風味が特徴で、多くの場合は魚介類(もしくは魚醤や塩辛や塩アミなどの漬物)やニンニクなどを使用し、その濃厚な匂いと強い風味を持つものである。また各家庭で先祖伝来の漬け方があり、家庭により様々な味があるのもキムチの特徴の1つ。そう考えると、“発酵しない”国産のキムチは、キムチとは呼べず、単なる「キムチ風浅漬け」と言うべきものなのである。

 前述の韓国農水産食品流通公社のサイトには、以下のような記述がある。

「自然発酵したキムチには、ラクトバチルス乳酸菌に代表される植物性乳酸菌が豊富に含まれており、植物性乳酸菌は、ヨーグルトなどの動物性乳酸菌と比べて、胃酸に強く、生きたまま腸に届くという利点があります。乳酸菌の細胞壁には、免疫増強因子があり、腸の免疫細胞を刺激するため、免疫力を高めます。

 キムチといえば、白菜キムチが一般的ですが、白菜は水分、繊維質も豊富ですので、 腸内環境を整えるには、最適な組み合わせです。また非加熱発酵のため野菜に含まれるビタミンCを壊さずに効果的に体内に摂取することができ、また発酵過程では、ビタミンB1、B2、 B12などが作られます。キムチ唐辛子の辛み成分(カプサイシン)には、アドレナリンを分泌する働きがあり、代謝を高め、血流を促し、体を温める事で、免疫力を高める効果が期待できます。」

 昨今、日本ではキムチの乳酸菌が腸内環境を整えることで、「腸活」ブームに乗って注目されているが、その効果を手に入れたければ、どのキムチを選ぶべきかは自ずとわかることだろう。

 

試食したら普通に「キムチ」だと思えるのは2商品!

 さて、最後になるが、(表1)の上位5位までにランクインしているキムチと追加購入の3商品の合計8品の「キムチ」を食べ比べてみたので、その結果を簡単に記しておきたい。

 最初に断っておくが、食べ物の「美味しい」「不味い」は好みがあるものなので、そうしたことはあまり書かずに、記者が感じた味の違いのみを記そうと思う。それでも個人的な見解であることには変わりはない。ちなみに、記者はキムチ好きだが、実はこれまでスーパーで買えるキムチというものをほとんど食べた経験がなく、韓国のソウルとチェジュ島で食べた経験と、日本の焼き肉屋で食べた経験、そして個人的に漬けたものを食べた経験がほとんどであることもお断りしておきたい。

第5位の『東海 プチこくうま キムチ 2食パック 100G』。第1位の『こくうま』よりも辛く、味はいいが、価格は約2倍も高い。“キムチ風浅漬け”としてはよく出来ているように思える。

 まず今回食べ比べた8商品に共通に言えることは、すべて「あまり辛くない」ということである。「直輸入」ものは、もう少し辛いことを期待していたが、どれも日本人向けなのか、あまりにもマイルドだった。美味しいかどうかはともかく、そのなかで一番辛く感じたのは、第5位の『東海 プチこくうま キムチ 2食パック 100G』だった。これは第1位の商品の小分け商品かと思ったが、味付けは違っており、こちらの方が濃厚で辛みもある。ただしこの商品、価格が、(表1)の「100g当り価格」を見てのとおり、他の商品の2倍も高いのである。

第1位の『東海 こくうま 熟うま辛キムチ 白菜 320G』は、見た目に派手な赤色。色が濃いからと言って、別に辛いわけではない。

 また第1位の『東海 こくうま 熟うま辛キムチ 白菜 320G』は、名前のとおりコクと旨味があり日本人ウケしそうだが、記者には塩が非常に強く感じられた。

第2位の『ピックルス ご飯がススム キムチ 200G』。ご飯がすすむように作られた漬物である。

次に、第2位の『ピックルス ご飯がススム キムチ 200G』と、比較のために追加購入した『CGC 韓国直輸入キムチ 400G』は、どちらもかつおぶしのダシ味が強く、ちょっとキムチ風にしただけの白菜の浅漬けにしか思えなかった特に後者は、正直、これが本当に直輸入品なのだろうかと疑問を感じたほどである。

韓国直輸入らしさを最も感じられなかった『CGC 韓国直輸入キムチ 400G』。

第3位の『フードレーベル 牛角 韓国直送キムチ 330G』は、5位までにランクインした唯一の直輸入商品だったが、これはとにかく「甘い!」に尽きる。見た目は最も濃い赤色で、激辛の期待を抱かせたが、食べると全然辛くなく、猛烈に甘い。そして甘く濃厚なコクがあるのみだ。きっとこれは好きな人はハマりそうだと思う。記者には、この甘さはつらいものがあった。

第3位の『フードレーベル 牛角 韓国直送キムチ 330G』。焼き肉チェーン『牛角』ブランドと、美味しそうな濃い赤色。これは好きな人はハマるだろうが、韓国直送でも日本人好みの味に感じる。

今回の試食で、記者の評価が高かったメーカーは『美山』。この「イチオシ」は、キムチ風漬物と割り切ると、美味しいし、直輸入もしっかりとしたキムチだった。

第4位の『美山 イチオシキムチ 200G』はキムチ風のとても美味しい漬物である。ちょっとだけ辛く、そして旨味、ダシが利いていて、漬物として美味しい。ただこれもちょっと甘過ぎる。

 

キムチの味わいがしっかりと感じられる『美山 熟旨キムチ 500G』。

同じ美山の商品でも、比較のため追加購入した直輸入マーク付きの『美山 熟旨キムチ 500G』(上写真)は、それほど辛くはないが「普通にいい味」のキムチである。

同様に、やはり比較に追加購入した直輸入品、第6位『大象 宗家(チョンカ)キムチ 380G』(上写真)も一口食べて、「普通に癖のないキムチだ」と感じた。こちらは『美山 熟旨キムチ』よりも少し塩味が強い。それでもキムチとして十分に満足できる商品である。

右が『大象 宗家(チョンカ)キムチ』、左は『フードレーベル 牛角 韓国直送キムチ』。見た目と実際の味は大違いである。

以上、食べ比べをまとめると、今回購入した計8品の中から、記者の個人的選択で

「キムチ」として買うなら、

   ・『美山 熟旨キムチ 500G』

   ・第6位『大象 宗家(チョンカ)キムチ 380G』の直輸入品の2つを選ぶ。

また「キムチ風漬物」として買うなら、

   ・第4位『美山 イチオシキムチ 200G』

を選ぶ。最初に断ったとおり、味には好みがあることだし、最後はやはり自分の好みと目的に合わせ商品を選ぶといいだけのことだろう。

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記者

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渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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