[第15回]美味しい「レトルトカレー」はどれ?売れ筋20商品から、記者が食べ比べしたら・・・
スーパーには、多種多様な「レトルトカレー」が売られている。安いモノ、高いモノ。辛口に、甘口に、中辛に、大辛。ビーフ、チキン、キーマ等々。どれを買えばいいのか。どれが美味いのか。一体みんなは何を買ってるのだろう。というわけで、今回の『日経POSランキング』は、「レトルトカレー」を取り上げる。コロナ禍で外出自粛が続くなか、家で食べられる簡単で、保存が利く「レトルトカレー」の売れ行きは好調であるらしい。さっそくいつものように『日経POS EYES』で、まずは軽く下調べからスタートだ。
1食分80円台がトップ10にズラリ
『日経POS EYES』の商品分類のカテゴリーで言うと、大分類「カレー」の中の小分類「レトルトカレー」で検索してみると、直近の2021年2月で見ても、昨年1年間で見ても、販売金額上位に登場する商品のラインナップに、ほとんど違いがない。そこで今回は、期間をここ最近の1年間、つまり「2020年3月から2021年2月」の1年間に決め、この期間の「レトルトカレー」の販売金額の上位20位までを表にまとめたのが、下の(表1)である。基となるデータは、日経が独自に全国のスーパーから収集したPOSデータを使用している。
表が色分けしてあるが、これは商品の価格、厳密に言うと「カレー1食分の平均価格」による分類を表している。具体的には、
・1食分の平均価格が100円未満の商品には茶色、
・1食分の平均価格が100円以上200円未満の商品には緑色、
・1食分の平均価格が200円以上の商品には青色
を表の背景色に使用しているのである。例えば、第1位の『ハウス プロクオリティ ビーフカレー 中辛 レトルト 170G×4』だと、170Gの1食分のレトルトパウチが4個入っているので、平均価格の345.6円を4で割り「86.4円」を1食分として算出し、背景色を茶色にしているという具合である。
なぜこのように価格により色分けをしたのか。その理由は、今回、記者はこのランキングの中のカレーをたくさん食べ比べてみて、価格帯により味にかなり差があることがわかり、価格帯を意識する必要を痛感したからである。味については、本稿の後半に詳しく報告するので、次は、このランキング表の分析をしたい。
1位、2位のハウスを追う、大塚食品、明治
まずパッと見、トップ10には茶色が多いことがわかるだろう。トップ10のうち7商品は茶色、つまり100円未満の商品である。100円未満といっても、すべて1食あたり80円台である。低価格商品ではあるが、やはり2倍も3倍も高い商品を買うのは、やや抵抗があるのかも知れない。この1食80円台が中心のトップ10に比べ、11位から20位はかなり状況が異なってくる。100円未満が4商品、100円以上200円未満が3商品、200円以上が3商品と、かなり分散してくるのだ。
メーカー別に見ると、トップ20のうち、9商品がハウス食品株式会社(以下、ハウス)、4商品が大塚食品株式会社(以下、大塚食品)、2商品がエスビー食品株式会社(以下、S&B)と株式会社明治(製造はヤマモリ株式会社)で、この4社で17商品を占めている。参考までに、このトップ20だけでなく全データ(709商品)で見ると、メーカー別のシェアは、ハウス28.9%、S&B15.9%、大塚食品8.5%、自社開発商品(PB)6.2%、明治5.8%が上位5社(自社開発商品を便宜上1社とカウント)である。
ブランド別で見ると、ハウスは『プロクオリティ』『加厘屋カリー』『カレーマルシェ』『選ばれし人気店』、大塚食品は『ボンカレー(ゴールドとネオ)』、S&Bは『カレー曜日』『ホテル・シェフ仕様』、明治が『銀座カリー』で、どれも多くの人にとって馴染みがあるブランドだろう。
カレーの辛さでトップ20を見てみると、20商品のうち10商品が「中辛」、4商品が「辛口」、3商品が「甘口」、そして「大辛」が1商品、特に辛さを設定していないのが2商品となっている。「中辛」が美味しいのか、それとも、とりあえず極端にしないで「中辛」で手を打とうとしているのか、そのあたりはわからないが「中辛」の人気が高いようである。
「そのままレンジ方式」は普及途上
最後にもう一つ、今回はランキング表の一番右に「レンジ」という欄を設けてみた。従来は、レトルトカレーは、お湯で温める、いわゆる湯煎が基本。もしレンジで温めるとすれば、レトルトパウチを開封し中身を皿等に出して、それにラップをかけて“チン”をする必要があった。ところが昨今は、レトルトパウチを開封せず、そのまま電子レンジで温めることができる商品が登場し始めたのである。これはやってみると、湯煎方式や別皿に出して“チン”する方式に比べ、とても楽で早いのである。当たり前のことだが、この便利さはやってみると圧倒的だ。いずれこの「そのままレンジ方式」がもっと増えていくだろうと思われるが、それができる商品には「レンジ」欄で「○」を、できない商品には「×」を付けたのだ。
レンジ調理にこだわる大塚食品。ボンカレーのブランドサイトより。
そうすると幾つか面白いことがわかった。少なくとも、この上位20商品を見る限り、この「そのままレンジ方式」を採用しているのは、ハウスと大塚食品だけである。またハウス商品の中でも、一番安い『加厘屋カレー』は「そのままレンジ方式」を採用していないのである。コスト高を避けるためなのだろうか。これはメーカー取材をしてみないと確実なことは言えない。
4ラウンドで味対決!200円未満のトップ3は?
さて、いよいよ味について、実際に今回記者が試食してわかったことをお知らせしよう。もちろん好みがあることなので、主観的な部分はなるべく排除するつもりである。今回記者は、この原稿を書くために、9品のレトルトカレーを同時に試食したが、同時に食べると、個々に食べていては気付かない、意外と大きな味の違いがはっきりとわかる。読者の皆さんも、ぜひ同時に幾つかのカレー食べて比較することをお勧めしたい。
ランキング表に戻ろう。今回、第7位、第9位の2つは購入できなかった。また第16位の商品は子ども向けの商品なので購入しなかった。この3商品以外の“ブランド”は、すべて購入し食べてみた。あえて“ブランド”と言ったのは、同じブランドで味の違うもの(辛口と中辛など)については、中辛を選んで買ったからだ。そして味の比較は、全部同時にやると混乱するので、同じような価格、同じようなコンセプトのものを組み合わせて、4ラウンドの“対決方式”で比較したのである。
第1ラウンド:ハウス プロクオリティー vs S&Bホテル・シェフ仕様
ということで、最初に比べたのは、この2つである。つまりランキング第1位と第12位の比較である。この2つの商品は、スーパーなどでも、完全にライバル商品として、並べて売られている(上写真)。どちらも170G入りのレトルトパウチが4つ、同じような袋に入っており、よく見ないと見間違いしそうな似た雰囲気を持つ。しかもどちらも、「プロクオリティ」とか「ホテル・シェフ仕様」という、ワンランク上のイメージを醸し出している。それなのに1食あたり80円台から90円台と価格は安い。食べてみると、その味には大きな違いがあった。今回は、どちらもビーフカレーの中辛である。
結論から言うと、第1位の『ハウス プロクオリティ ビーフカレー 中辛 レトルト 170G×4』の勝ちである。正直、こんなに違うとは思っていなかった。ところが、この『ハウス プロクオリティ』は、お皿に盛ったときの香りから違っていた。スパイスの利いたカレーのいい香りが漂うのである。そして口に入れたときの軽い酸味、そして後に残る複雑なスパイスの味、メリハリのあるしっかりとした味わいだった。
それに比べ、第12位の『ハウス プロクオリティ ビーフカレー 中辛 レトルト 170G×4』は、おそらく単独で食べれば十分に美味しいカレーなのだと思うが、2つ同時に比べてしまうと、どうしても見劣りがした。皿に盛ったときの香り、そして口に入れたときの味わい。スパイス味を感じず、少し甘いだけの、何というか、ぼんやりとした「カレー」というものを食べているという認識しか持てなかった。これが第1位と第12位の差なのだろうか。
あくまでも個人的な感覚なので、興味ある方は、ぜひ自分の舌で比較してみて欲しい。
第2ラウンド:ハウス 加厘屋カレー vs 大塚食品 ボンカレーゴールド vs 明治 銀座カリー
第2ラウンドはランキング第2位と第3位と第4位の、切迫した3商品対決である。辛さはどれも中辛。ただし、価格は『加厘屋カレー』より『ボンカレーゴールド』の方が量が少ないのに5割ほど高く、『銀座カリー』はボンカレーよりさらに3割ほど高い。
面白いのは、『ハウス 加厘屋カレー』と『大塚食品 ボンカレーゴールド』は、とても対照的な味がすること。加厘屋カリーの最大の特長はスパイスの利いた、しっかりとした深い味わい。盛ったときも口に含んでも、スパイスがその存在をアピールする。特に口に入れた瞬間のカルダモンの香りは特徴的。そして口に残る後味も、さわやかにスパイス味がある。
それに対し、『ボンカレーゴールド』は、いわゆる「日本のカレーライス」の味がする。何か特別にスパイスが目立つわけでもなく、ビーフとダシのうま味が染みるようなまろやかな美味しさ。ひょったしたら、この味の方が大衆受けするのかもしれないとも思う。この2商品は、完全に好みが分かれそうである。
今回の試食で一番の驚きだったのが、『明治 銀座カリー』だった。これは文句なく美味い。入っている牛肉も大きく、炒めたオニオンとバターの味が深いコクを生み出している。比較した3つの中では、確かに一番価格が高く、『加厘屋カレー』の約2倍の価格だが、それでも記者なら、躊躇することなく『銀座カリー』を買うだろう。ワンランク上の味だからである。
(上まで戻るのが大変なので、ここに再度、ランキング表を掲載しておく)
第3ラウンド:S&B カレー曜日 vs 大塚食品 ボンカレーネオ
第3ラウンドは、“野菜ゴロゴロ”対決である。ランキングの第10位と第11位で、こちらも切迫した対決。しかも価格がどちらも200円を少し上回る少々高い商品だ。この値段はカレー自体の価格というより、野菜や牛肉がゴロゴロとたくさん入っているからだと思われる。パッケージの写真を見ても、カレーの感じが似ているこの2商品(下写真)。果たして味はどうなのだろうか。
盛りつけてみると、確かにどちらもレトルトカレーとは思えないほど、野じゃがいも、にんじん、そして牛肉がゴロゴロと入っている。この野菜と肉の量は、見た感じでは『S&B カレー曜日』の方が多いし、切り方が大きい。ところが、『S&B カレー曜日』は、記者の感覚では、カレーの味がしない。というか、これがいわゆる昔の「日本のカレー」なのかも知れないが、どことなく遠い昔、給食で食べたカレーを思い出させる味だった。
それに比べ、『大塚食品 ボンカレー ネオ』は、グッとカレーっぽい。同じ『ボンカレー』ブランドでも、こちらの『ネオ』は『ゴールド』とはまるで異なる雰囲気のカレーである。赤ワインを感じる、なめらかなデミグラスソースを食べているような感じ。これが『ネオ』である。
というわけで、野菜ゴロゴロ対決は、『大塚食品 ボンカレー ネオ』の勝ちだが、この両者の価格を考えると、記者なら『ハウス プロクオリティ』や『明治 銀座カリー』を選ぶだろう。カレー自体の味は、この2つの方が上である。
第4ラウンド:ハウス カレーマルシェ vs ハウス 選ばれし人気店 濃厚バターチキンカレー
最後は、対決というよりも記者が確認のために食べた対決だ。実は、ランキングトップ20で、一番高い商品と二番目に高い商品で、第14位とだ第20位の対決である。第3ラウンドの2商品は、どちらも200円を超す高い商品だったにもかかわらず、やや期待外れだったため、さらに高い商品は、どうなのか試してみたくなったのである。
結果は、明白だった。正直言って、この2つのカレーは、どちらも非常に美味しかった。明らかに食べ比べをした他の商品とはレベルが違うものだ。他の商品は、やはりどうしてもインスタントのどこか無理を強いているような味を感じるが、この『ハウス カレーマルシェ』と『ハウス 選ばれし人気店 濃厚バターチキンカレー』は、そんな無理を感じない。自然で、当たり前に美味しい。特に後者はレトルトっぽさをまるで感じない。強いて言えば、この2つといい勝負ができるのは『明治 銀座カリー』だけだろう。これだけで結論付けることはできないが、300円クラスになると段違いに美味しくなるのかも知れない。いずれ、今度は高いレトルトカレーの特集をやってみたいものである。
味の『銀座カリー』、コスパの『加厘屋カレー』
以上が食べ比べの結果であるが、第4ラウンドの値段の高い2つは除外して、その他の7商品で記者の私的なトップ3を決めると以下のようになる。
1位 明治 銀座カリー 中辛
2位 ハウス プロクオリティ ビーフカレー 中辛
3位 ハウス 加厘屋カリー 中辛
おそらく、日本的なカレーが好きな人なら、これとは全然違う順位になるに違いない。好みの問題なので、あくまでも参考意見の1つ程度に見て欲しい。さてあなたの好みはどれだろうか。ぜひ試すときは、2つの商品を同時に食べ比べてみて欲しい。(写真・文/渡辺 穣)
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