[第31回] 多様な商品が売り場に並ぶ「一口タイプ」のチーズ。今、どれが一番売れてる?プロセスチーズ市場を牽引する「一口タイプ」のトップ20を発表!
今でこそ、チーズと言うと、「カマンベール」だの、「チェダー」だの、「モッツァレラ」だのといった「ナチュラルチーズ」が当たり前になっているが、かつて日本では、チーズと言えば、「プロセスチーズ」という時代が確実にあった。今回の『日経POSランキング』のテーマは、誰でも一度は口にしたことがあるだろう、プロセスチーズを一口サイズにしたタイプのもの。『日経POS情報POS EYES』の商品分類で言うと、「一口タイププロセスチーズ」というカテゴリーの商品である。
《内容まとめ》
・プロセスチーズは、一口タイプとスライスで84%を占める。
・ランキング4位~20位には、“あのブランド”がいっぱい!
・トップ3は、輸入品も入って、“意外と”接戦!?
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本題に入る前に、まずナチュラルチーズとプロセスチーズの現在の販売状況を見てみよう。プロセスチーズとは、ナチュラルチーズを加熱・溶解し、乳酸菌発酵を止めて作られる加工チーズで、安く大量生産することができることもあり、日本のチーズマーケットでは、長らくプロセスチーズが主役だった。ところが今は食生活の洋風化も手伝って、ナチュラルチーズは普通に日常生活に入り込んでいる。
「一口タイプ」と「スライス」で84%を占める!
いつものように日本経済新聞社が全国のスーパーから独自に収集したPOS EYESデータで販売金額を調べてみると、過去5年間では常にプロセスチーズの販売金額がナチュラルチーズの販売金額を上回っているが、その差は徐々に小さくなりつつあり、直近1年間(2020年5月~2021年4月)のプロセスチーズの販売金額は、ナチュラルチーズの販売金額の約1.17倍まで接近している。
それではこのプロセスチーズは、さらにどのように分類されているのだろう。今度は大分類「プロセスチーズ」から、その中の小分類別の販売金額のデータを調べてみた。その結果が下の(表1)である。
これを見ると、第1位の「一口タイププロセスチーズ」から第10位の「その他プロセスチーズ」まで、10種類の小分類に分かれていることがわかる。そして第1位「一口タイププロセスチーズ」と第2位「スライスプロセスチーズ」だけで、プロセスチーズ全体の販売金額の84%を占めていることが目立っている。中でも今回のテーマ「一口タイププロセスチーズ」は、プロセスチーズ全体の販売金額の49.1%と人気が高い。それに比べ、かつてプロセスチーズの代表格だった「箱入り」タイプのものは第3位ではあるものの、シェアはわずかに4.3%に過ぎない。つまり昨今、プロセスチーズを買う人は、おつまみ用の「一口タイプ」か、トーストやサラダ用の「スライス」を買う人が大部分であるということだ。今回は、このプロセスチーズで最も人気を集めている「一口タイププロセスチーズ」を商品別に細かく見ていきたいと思う。
第4位~第20位は、お馴染み“あのブランド”が9商品!
『日経POS情報POS EYES』を使い、日本経済新聞社が昨年5月から今年4月までの1年間に全国のスーパーから独自に収集したPOSデータから、小分類の「一口タイププロセスチーズ」で検索し、販売金額の「第4位から第20位まで」をランキングしたのが、下の(表2)である。
この表を見ると、なんと言っても目立っているのが、六甲バター株式会社(神戸市中央区)の『QBB』ブランドの商品群だろう。第4位から第20位の17商品中、実に9商品が、この『QBB』ブランドで占められている。同社のブランドサイトを見ると、現在『QBBベビーチーズ』が10種類、『QBBプレミアムベビーチーズ』が3種類のラインナップがあるが、そのうちの9種類がトップ20にランクインしていることになる。
スーパー等でよく見かける、あの4個入りの小さな『QBB ベビーチーズ』は、メーカーサイトによると年間約2億本が売れているとのこと。全国民が1年間に1~2本は食べている計算になる。ちなみに、ブランド名の『QBB』とは、「Quality’s Best & Beautiful」の頭文字を取ったもので、その意味するところは、メーカーサイトによると、
『「Quality’s Best」=品質へのこだわり。これは安全についての妥協を排除し、だれもが安心して食べられる健康的な製品の提供を意味しています。「Best&Beautiful」=おいしい品質を意味しています。この「おいしい」には単に味だけでなく、新鮮さ、楽しさ、豊かさも含みます。』
ということである。
雪印メグミルクも4商品がランクイン!
4位~20位では、『QBB』の群れに割って入るように、第8位に『雪印メグミルク 毎日骨太 ベビーチーズ プロセスチーズ 4個 48G』という、雪印メグミルク株式会社(札幌市東区)の商品がランクインしている。『QBBベビーチーズ』が1個60Gなのに対し、こちらの『毎日骨太 ベビーチーズ』は1個48Gとやや小ぶり(上写真)。『毎日骨太』ブランドは、カルシウム不足の現代人のために雪印メグミルクが提案するブランドで、チーズだけでなく牛乳やヨーグルト、スキムミルクなどのラインナップを備えている。この『毎日骨太 ベビーチーズ』は、48Gのベビーチーズ1個で1日に必要な摂取量の3分の1のカルシウムが摂取できるのが最大の特長である。
第10位にも雪印メグミルクの別ブランド商品『雪印メグミルク 6Pチーズ コクとうまみ 6個 96G』がランクイン。『6P』チーズといえば、なんと1935年にはすでに『6P』チーズの前身にあたる製品を作り(下写真)、現在の形になったのが1954年という長い歴史を持つロングセラー商品。現在では、5種類にラインナップを増やしているが、この第10位の商品は、通常の『6P』チーズにゴーダチーズを加え、その名の通り「コクとうまみ」を凝縮させた商品。口に含むと、味が濃くしっとりしていて、ワインやビールのつまみにバッチリ相性が良さそうである。『6P』ブランドでは、第15位にも塩分控えめの『雪印メグミルク 6Pチーズ 塩分25%カット 6個 96G』がランクインしている。
トップ3のうち、2位と3位は外国製品!
さて、ランキングトップ3である。実は第3位と第2位は同じ商品の個数違いで、原産国がフランスの輸入商品。牛が草を食むのどかな牧場の風景のパッケージでお馴染みの『キリ クリームチーズ』である。この『キリ クリームチーズ』は、1966年にフランスで発売され、今や世界130か国で販売されている。日本でも1983年から販売されていて、メーカーであるフランスのベル社の日本法人ベル ジャポン株式会社(東京・港区)が輸入元、伊藤ハム株式会社(東京・目黒区)が販売元となっている。両社のホームページには、それぞれ『キリ クリームチーズ』を使用したさまざまなレシピが掲載されており、これを見ているだけでも、このチーズを買いたい気分にさせられる。
ランキングトップは、まさに“定番”商品が!
最後にランキング第1位である。実は、今回のランキングデータでは、メーカー別に見ると、シェア1位が『六甲バター』の31.8%、第2位が『雪印メグミルク』の25.1%だった。確かに六甲バターの『QBB』ブランドは、上位に多くの商品がランクインしているが、今回、第1位だったのは『雪印メグミルク 6Pチーズ 6個 108G』である。
雪印メグミルク『6P』ブランドの定番商品で、シェアが12.2%と第2位に約2倍の大差があるようにも見えるが、第2位と第3位の『キリ クリームチーズ』は同じ商品の個数違いなので、この2つのシェアを合わせると12.8%で、トップを追い抜くことにもなる。そう考えると、この2商品は意外と接戦なのだ。最後にもう一度、第1位から第20位までの全体のランキング表を以下に掲載する。
『6P』ブランドの魅力はいろいろあるのだろうが、“雪印”の雪の結晶を見るような、円を6等分に切り分けた形が、この商品の大きな魅力と安心感なのではないかと記者には思える。現在「カマンベール入り」や「スモーク味」など現在は5種類のラインナップを持つ『6P』チーズ。『QBB ベビーチーズ』や『キリ クリームチーズ』とのシェア争いはどうなっていくのか、今後も目が離せない。さて、あなたは上の(表4)の、どの「一口タイププロセスチーズ」がお好みだろうか。(写真・文/渡辺 穣)
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