[第5回]昨年最も売れた「乾麺そば」は?コスパがいいのは?「信州そば」だらけの中、「山形」「新潟」がランクイン!
日経POSランキング[第5回]のテーマは「乾麺そば」、つまり「生そば」や「ゆでそば」ではなく、乾燥させたそばである。日本食料新聞が2019年4月に実施したアンケート調査を見ると、そばを買う人の約半数(49.4%)は「乾麺そば」を買い、「生そば・ゆでそば」を上回ってトップ。さらに自宅用にそばを買う場合、「スーパー」で買う人が88.7%と断トツである。スーパーに行くと、実際、数多くの銘柄の「乾麺そば」が棚に並ぶ。そば好きでも、一体どれを買おうか悩むところだ。そこで今回は、今どの「乾麺そば」が売れているのか、『日経POS EYES』を使ってさっそく調べてみた。
(表1)
信州そばの中で奮闘!『山形のとびきりそば』『ヘギソバ』!
記者が住む八ヶ岳山麓では、毎年秋になると、そばの白い花がいたる所に咲き誇る。日本のソウルフード「そば」の一大ブランド「信州そば」を肌で感じる時であるが、それを数字で見ると、長野県の乾麺そばの全国シェアは40%にもおよび全国トップ。もともと乾麺そばは、明治時代に長野市で誕生したという歴史を持つ。スーパーに並ぶ乾麺そば商品を見ても、圧倒的に信州そばが多く、それは上のランキング表にも表れている(ランキングは「干し日本そば」という商品分類だが、記事ではこれを「乾麺そば」と記述する)。
上の表1は、日経独自収集の全国約460店のスーパーのPOSデータから、2020年1月~12月の1年間の「干し日本そば」というカテゴリーで分類し、その販売金額によりランキングしたものである。
これを見ると、第2位の『小川 山形のとびきりそば やまいも入』と第8位の『自然芋 ヘギソバ』以外は、すべて信州そばなのである。2位、5位、7位には日清フーズ株式会社(東京・千代田区)の商品がランクインしているが、これらは発売元こそ日清フーズだが、製造元は長野県千曲市の滝沢食品で、れっきとした信州そばだ。つまり並み居る“信州そば軍団”の中にあって、まさに孤軍奮闘しているのが、山形と新潟のこの2つの商品というわけである。
そこで今回はまず第2位にランクインしている『小川 山形のとびきりそば やまいも入』をご紹介したい。製造元は、株式会社小川製麺所(山形県山形市)。実はこの商品、記者が日頃食べている乾麺そばで、その特長はすでによくわかっている。何よりこの『山形のとびきりそば』の最大の特長は、そば粉のつなぎに山芋を使用することで、ツルツルとしたのどごしと、田舎そばのしっかりとした歯ごたえを両立させていること。ゆで時間が7~8分と乾麺そばの中では長いのも、このそばのコシの強さの証しだと記者は感じている。
この記事を書くにあたり、近くのスーパーに、この商品を買いに行くと、パッケージになにやら上の写真のようなラベルが貼られている。よく見ると「日経POSセレクション 売上No.1」と書かれておりビックリ。まるでこの記事のために狙ったようではないか。しかしこれは全くの偶然である。このラベルによると、『山形のとびきりそば』は、平成の31年間で「一番売れたそば」だと、日経POSデータがはじき出しているということなのだそうだ。
素朴な田舎そばは好きだが、ツルツルとした食感も捨てがたいと感じているそば好きには、一度試していただきたい乾麺そばである。
ランキングの中のもう1つの“信州以外派”である第8位『自然芋 ヘギソバ』は、残念ながら記者は今回入手することができなかったため、直接の試食レビューはできないが、新潟のへぎそば自体には馴染みがあるので、その経験とメーカーのHPやネット情報などから少々ご紹介したいと思う。
上の写真は、『自然芋 ヘギソバ』の製造元である株式会社自然芋そば(新潟県上越市)のサイトから拝借したものだ。この写真からもわかるとおり、「へぎそば」というのは、おおむね淡い緑色をしている。それは「へぎそば」はそば粉のつなぎに布海苔(ふのり)という海草を使っているためで、布海苔は調理前は赤色をしているが、茹でると鮮やかな緑色に変化するため、その緑色が「へぎそば」の特長の1つになっているのである。
海草を使用するため、そばの味わいも磯の香りと味わいが強く出て、かなり独特の味わいが楽しめる、と同時に好き嫌いも分かれる部分でもあるだろう。ツルリとした食感は素晴らしく、今回『自然芋 ヘギソバ』もぜひ試したかったが、できずに残念である。
(表2)
乾麺そばの価格は「100g・100円」が目安!?
話をランキングに戻そう。上の表2は、先ほど表1で示したランキングトップ10の商品を、その平均価格から100gあたりの価格を計算し、それを示したものである。
これを見ると、100g当り100円を超える商品は、10品中5品、100円未満の商品も10品中5品あることがわかる。ものすごく大雑把に言えば、「100g100円」を購入時の参考価格として捉えることができるかもしれない。例えば、300g入りの商品が300円なら普通、250円なら安め、350円なら高めといった具合である。
そこでトップ3の100g当りの価格を見てみると、第1位の『信州ほしの 信州田舎そば 小諸七兵衛』はかなり安く、トップ10の中でも100g当りの価格は3番目に安い。それに対し第3位の『かじの 十割そば本舗 伝統の二八そば』は、100g当りの価格が3番目に高い。第2位の『小川 山形のとびきりそば』は両者の中間に位置することがわかる。
どんな商品にも言えることだが、売れる商品というのは、この価格と品質のバランス、つまりコスパがいい。乾麺そばで言うなら、価格と味わいや食感のバランスがいいということになるだろう。さっそくトップ3を実際に「おためし」してみた。コスパがいいのは、どの「乾麺そば」だろうか。
上の写真を見て欲しい。ランキング第1位の『信州ほしの 信州田舎そば 小諸七兵衛』は、麺の見た目にはっきりとした特徴がある。表面がウネウネと波打っているのだ。これは製造元である信州ほしの株式会社(長野県小諸市)の独自製法「もみ切り打ち」による製麺で、こうすることで麺がほぐれやすく、つゆの絡みが良くなり、みずみずしさが長持ちするのだそうだ。麺の色は、トップ3の中では最も白っぽく、ゆで時間は最も短い4~5分。
麺をゆで上げ、冷水でしめ、シンプルにつゆと薬味でいただくと、食感が良く、つゆの絡みも確かにいいことがわかる。ところが肝心のそばの香り、口の中に残るそばの味わいが少し足りない印象。よく言えば上品な感じなのだが、“そば粉感”の強いそばが好きな記者には少々物足りない印象なのである。
ランキング第2位の『小川 山形のとびきりそば やまいも入』は製造元が株式会社小川製麺所(山形県山形市)で、その特長等については、すでに書いたとおり。山芋をつなぎに使用することで、ツルツルとした食感と田舎そば風のしっかりとした歯ごたえの両立が魅力である。ゆでる前のめんの色は、3つの中では中間で、ゆで時間は7~8分と最も長い。
ゆであがった麺を口に含み噛むと、そば粉のいい味がする。歯ごたえもいい感じなのだが、歯ごたえや味の割には、やはり香りが弱い。記者は普段から、よくこの乾そばを食べているが、多少の物足りなさは「乾麺の限界」だろうと勝手に割り切っていた。
最後はランキング第3位の『かじの 十割そば本舗 伝統の二八そば』である。製造元は山本商品株式会社(長野県長野市)で、ゆでる前の麺の色は、他の2つに比べ明らかに黒っぽい。「二八そば」の名前通り、そば粉を8割使用し、そば湯もおいしいというのがセールスポイントになっている。ゆで時間は5分と3つの中では中間の長さ。
さっそくゆで、冷水でしめ、つゆに付けていただく。と・・・、これは「旨い!」。他の2つよりも明らかにそば粉の香りが際立っている。しかもそば粉を感じられるようなザラザラ感のある食感。そしてしっかりとした歯ごたえ。乾麺でここまで美味しいそばが味わえるとは実は想定してなかった。販売元である株式会社山本かじの(長野県長野市)のHPを見ると、美味しいそばへのこだわりが随所に溢れている。
トップ3の食べ比べは、販売金額ランキングの順位が逆転した結果となった。そしてこれは表2で示した「100g当り価格」の高い順に美味しいという結果にもなった。誤解なきように付け加えるが、食べ比べでは3位となった『信州ほしの 信州田舎そば 小諸七兵衛』も決して美味しくないわけではない。とても美味しいそばである。しかし、『かじの 十割そば本舗 伝統の二八そば』の味は、頭一つ抜けていたのである。
冒頭にも書いたとおり、そばは日本のソウルフードである。「乾麺そば」とはいえ、技術の進歩により、そば粉の割合を高くすることが可能となり、今では十割そばの乾麺そばも存在する。比較的価格は安く、しかも保存性も高い。もし今度スーパーに出向いたときには、自分に合った「乾麺そば」に少しこだわって、ステイホームの時間に「和」の彩りを少し付け加えてみてはいかがだろうか。
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